防衛省・自衛隊関係者の声


自衛隊や防衛省の現場の人たちは、昨今の政治家より地に足がついた冷静な意見を持っています。


そうした現場の声が聞けるのが、自衛隊の準機関紙『朝雲新聞』。

そこからいくつかのコラムを紹介したいと思います。

<自衛官の不足と少子高齢化>

 

・・・・自衛隊は今後、隊員の年齢や階級の構成比を、理想的なピラミッド形に近づけるため、陸士や海士、空士といった任期制の自衛官を増やす方針だ。だが、その実現を阻んでいるのが少子高齢化だ。

 

自衛艦の募集対象となる18歳から26歳までの若者は、20年前の1700万人から昨年は1100万人にまで激減している。しかも、4年や五年の任期を終えて再就職しても、自衛官の経験を生かせる仕事は少なく、任期制自衛官を志す若者は、さらに減ってしまうだろう。

 

政府は昨年末、新防衛計画の大綱を策定した。だが、その文面からは自衛官募集の厳しさは伝わらない。精強性を維持し、大綱の一翼を担う任期制自衛官の在り方は、今年取り組むべき最優先の課題だ。

 

(朝雲寸言2014.1.2から抜粋)


 

<人質救出の非現実性>

 

・・・人質救出は極めて困難な作戦だ。米軍は昨年、イスラム国に拘束されている二人のジャーナリストを救出するため、精鋭の特殊部隊「デルタフォース」を送り込んだが、居場所を突き止められずに失敗した。

 

 作戦に際し、米軍はイスラム国の通信を傍受し、ハッキングもしていたに違いない。さらに地元の協力者を確保し、方言を含めた中東の言語を自在に操れる工作員も潜入させていたはずだ。もちろん人質を救出するためであれば、米軍の武力行使に制限はない。それでも失敗した。

 

 国会質問を聞いていると、陸上自衛隊の能力を強化し、現行法を改正すれば、人質救出作戦は可能であるかのような内容だ。国民に誤解を与える無責任な質問と言っていい。

 

(朝雲寸言2015.2.12から抜粋)


 

<日本人らしい自衛官>

 

 そこかしこに落ちていたアルバムを拾い集めると、隊員たちは丁寧に一枚ずつページを繰って、からぶきをしていった。部隊の指揮官が命じたわけではない。東日本大震災の被災地で、派遣部隊によるアルバム回収作業は、自発的に始まったとされる。

 

(中略)

 

 世界中どこを探しても、災害現場に派遣されて、落ちているアルバムにまで気を回す軍隊はない。自国民だからではないはずだ。自衛隊なら海外の被災地でも同じことをやる。隊員たちの体が自然に動く。

 

 日本人気質がそうさせるのかもしれない。困った人を放っておけない。相手の気持ちになって考える。・・・自衛隊にはそんな、日本人の良い部分が「保存」されているように感じる。

 

 内閣府の世論調査で「自衛隊に良い印象」を持つ人は92.2%と過去最高になったという。国民が求めているのは「日本人らしい自衛官」なのかもしれない。

 

(朝雲寸言2015.3.12から抜粋)